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『楽園とは探偵の不在なり』感想・レビュー|天使がいる世界で起こる“特殊設定クローズドサークル”ミステリ【斜線堂有紀】

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斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』は、

 

  • 孤島
  • クローズドサークル
  • 名探偵
  • 連続殺人

 

という王道本格ミステリの要素に、

 

“二人以上殺すと天使に地獄へ落とされる世界”

 

という強烈な特殊設定を組み合わせた作品です。

 

特殊設定ミステリとして高い評価を受け、 『このミステリーがすごい!』など各種ランキングにも続々ランクインしました。

 

一見すると奇抜な設定に見えますが、 実際に読んでみると面白いのは“設定そのもの”だけではありません。

 

「天使が存在する世界で、人はどう正義を考えるのか」

 

というテーマが作品全体に流れており、 哲学的な空気をまとったミステリとしても非常に印象的でした。

 

本記事では、『楽園とは探偵の不在なり』のあらすじや魅力を、 ネタバレなしで感想レビューしていきます。

 


楽園とは探偵の不在なり (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

『楽園とは探偵の不在なり』あらすじ・書籍情報

 

あらすじ

二人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。

細々と探偵業を営む青岸焦は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱に誘われ、天使が集まる常世島を訪れる。

そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。

かつて無慈悲な喪失を経験した青岸は、過去にとらわれつつ調査を始めるが、そんな彼を嘲笑うかのように事件は続く。

犯人はなぜ、そしてどのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。

最注目の新鋭による、孤島×館の本格ミステリ。

カバーそでより引用

 

 

書籍情報

 

  • 著者:斜線堂有紀
  • 出版社:早川書房
  • 刊行日:2020年8月25日
  • ページ数:315ページ
  • ジャンル:特殊設定ミステリー・クローズドサークル・本格ミステリ

 

 

『楽園とは探偵の不在なり』感想

 

 

“天使がいる世界”という設定がとにかく面白い

 

まず、この作品最大の魅力は設定です。

 

“二人以上殺した者は天使によって地獄へ落とされる”

 

というルールだけ聞くと、 「犯罪がなくなる平和な世界なのでは?」と思ってしまう。

 

しかし実際は逆でした。

 

作中世界では、

 

  • 一人なら殺しても地獄には落ちない
  • どうせ地獄行きなら大量殺人をする
  • 天使の基準が曖昧



など、人間側の解釈によって社会が歪んでいきます。

 

この、

“絶対的な存在が現れたのに、人間は全然救われない”

という世界観がかなり面白い。

 

単なる特殊設定ではなく、

  • 正義とは何か
  • 天国と地獄は存在するのか
  • 人間は罰があるだけで善くなれるのか

といったテーマまで掘り下げられていて、 読んでいてかなり考えさせられました。

 

ミステリでありながら、SFや哲学小説のような読後感もあります。

 

 

孤島×館×特殊設定。“クローズドサークル好き”には刺さる

 

舞台は、天使が集まる孤島「常世島」。

迎えの船が来るのは数日後。

そして館の中では連続殺人が起きる――。

 

↑もう完全に、 “殺人事件が起きるための舞台”です。

 

王道クローズドサークルに、 「天使がいる世界」という特殊設定が組み合わさることで、 独特の緊張感が生まれていました。

 

特に面白いのが、

 

「二人以上殺すと即地獄行きなのに、なぜ連続殺人が可能なのか?」

 

という部分。

 

この世界観そのものがミステリの核になっているため、

単なる舞台設定にとどまらず、きちんと謎解きに絡んでいる点が非常に良かったです。

一方で、本作はかなり“特殊設定寄り”の作品でもあるため、

読者によって好みが分かれるタイプのミステリと言えるでしょう。


『屍人荘の殺人』のような近年主流になりつつある“特殊設定×クローズドサークル”が好きな方には、 間違いなく強く刺さる一冊だと思います。

 

 

👇こちらの『屍人荘の殺人』レビューもあわせてどうぞ

 

今村昌弘『屍人荘の殺人』感想・レビュー|本格ミステリー×特殊設定の衝撃作 - 読んで観て感じて byこよる

 

名探偵・青岸焦のキャラクターが印象的

 

主人公である名探偵・青岸焦も印象的でした。

 

やる気があるのかないのか微妙に掴めない人物ですが、 探偵としての勘は鋭い。

 

しかしこの世界では、 “二人以上殺した犯人”は天使によって裁かれてしまうため、 探偵という職業自体が存在意義を失いかけています。

 

つまり本作は、

 

「名探偵が活躍できなくなった世界」

 

の物語でもあるんです。

 

設定の使い方が本当に面白い。

 

青岸たちは「自分たちは正義の味方だ」と繰り返しますが、

その価値観も“天使がいる世界”だからこそ強調されているように感じました。

 

現実の感覚で読むと少し青臭く感じる部分もありますが、

 

“絶対的な裁きが存在する世界で、人間の正義とは何なのか”

 

を描こうとしている作品なのだと思います。

 

個人的には、 ミステリとして以上に、

 

「天使が存在する世界」と「青岸焦という探偵」

 

そのものが強く印象に残りました。



“二人以上殺した者は地獄に堕ちる”という世界設定があまりにも魅力的で、
ミステリという枠を超えて、この世界の日常や価値観そのものをもっと見てみたくなります。

だからこそ、『楽園とは探偵の不在なり』は、
事件の真相だけでは終わらない、“世界観そのものが記憶に残る作品”でした。

 

 

 

まとめ

 

『楽園とは探偵の不在なり』は、

 

孤島クローズドサークル×特殊設定ミステリー

 

として非常に完成度の高い作品でした。

 

特に、

 

“二人以上殺すと地獄へ落ちる世界”

 

という設定が秀逸で、 単なるギミックではなく、 物語や動機、世界観そのものに深く関わっているのが面白かったです。

 

一方で、 特殊設定の説明や世界観描写が多めなので、 純粋な本格ミステリを求める人には好みが分かれるかもしれません。

 

 

  • 特殊設定ミステリが好き
  • クローズドサークルが好き
  • 世界観の強いミステリを読みたい

という方にはかなりおすすめです。

 

“天使がいる世界”の物語を、もっと読みたくなる一冊でした。