『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』は、麻根重次による本格ミステリーの連作短編集。
雪山で発見された不可解な遭難死、密室殺人、暗号――。
バラエティ豊かな五つの事件を、安曇野市の謎解きコンサルタント事務所「オフィスレイヴン」の所長・真々部律香が解き明かしていく。
本格ミステリーとしての完成度はもちろん、個性的なキャラクターたちの掛け合いも魅力的な作品でした。
今回は『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』をネタバレなしでレビューします。
『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』
あらすじ
吹雪のテントで発見された若い夫婦の遭難死体。
夫の体には小さな雪ダルマがいくつも載せられており、妻は夫の切り取られた小指を握っていた。
この怪奇きわまる事故現場が物語る驚愕の真相とは?(「スノウマンの葬列」)
──異様な状況下で発生するミステリアスな事件の数々に、安曇野の謎解きコンサルタント「オフィスレイヴン」の女性所長・真々部律香が挑む!
本格推理の醍醐味を存分に堪能できる五つの犯罪物語
書籍情報
スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章
- 著者:麻根重次 あさねじゅうじ
- 刊行日:2026年1月18日
- 出版社:角川春樹事務所
- ジャンル:本格ミステリー・連作短編集
- ページ数:304ページ
『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』感想
表題作「スノウマンの葬列」が圧巻
五編の中で最も印象に残ったのは、表題作「スノウマンの葬列」でした。
雪山で遭難した若い夫婦の事件から物語は始まる。
夫の遺体にはいくつもの雪だるまが置かれ、妻は夫の切断された小指を握って亡くなっている――という異様な光景から物語が始まります。
「なぜ雪だるまなのか」「なぜ小指をにぎっていたのか」。
読み始めてすぐに謎へ引き込まれ、一気に最後まで読まされた。
単なる奇抜なトリックではなく、人間ドラマまで含めて余韻の残る一編。
本作を読むなら、まずこの表題作だけでも十分に読む価値があります。
真々部律香という探偵が魅力的
主人公・真々部律香は、よくある万能型の名探偵ではありません。
双極性障害の影響で体調の浮き沈みが激しく、絶好調のときは驚異的な推理力を発揮する一方、抑うつ状態では現場へ行くことすら難しくなる。
そのため、副社長の古厩達希が現場を駆け回り、律香が推理を組み立てるという役割分担になることもある。
この「常に完璧ではない探偵」という設定は、事件ごとに新鮮さを与えていたように思います。
人間味があり、応援したくなる主人公になっている。
達希とのコンビも息が合っており、振り回されながらも支え続ける姿が微笑ましかった。
帯には中山七里氏のコメント
「令和の御手洗潔、推参(ただし、ややメンヘラ)」
確かに、天才肌で気分の浮き沈みが激しい探偵という点では、御手洗潔を思わせる部分もあり、このキャラクターが好きな人には刺さる作品だと思いました。
私は好きです!
本格ミステリー好きなら楽しめる連作短編集
収録されている五編は、それぞれ事件のタイプが大きく異なります。
雪山遭難、密室殺人、暗号ミステリー、不可解な状況の真相、毒殺事件とバリエーションが豊富なため、最後まで飽きずに読めます。
一方で、第三話「セントラルドグマ」は遺伝暗号を扱うため、専門的な説明がやや長く感じました。
個人的には暗号は少し難しく面倒で、流し読みしてしまった部分も……。
とはいえ、それ以外の作品はいずれも読みやすく、本格ミステリーとして十分楽しめる内容でした。
続編を読みたくなるシリーズだった
読み終えて最初に思ったのは、「もっとこのシリーズを読みたい」ということ!
短編集なので一話ごとの満足感はあるのですが、魅力的なキャラクターたちを見ていると、もっと長編で活躍する姿も読みたくなる。
特に龍太は出番が少なく、まだ人物像が掴み切れていない。
今後シリーズが続くなら、彼にもスポットが当たることを期待したい。
まとめ
『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』は、本格ミステリーとしての面白さと、魅力的なシリーズキャラクターの両方を楽しめる連作短編集でした。
特に表題作「スノウマンの葬列」は非常に完成度が高く、読後もしばらく余韻が残る一編だった。
真々部律香という探偵も非常に個性的で、今後の活躍をもっと見たいと思わせてくれる。
本格ミステリーが好きな人はもちろん、シリーズ作品として長く付き合える探偵役を探している人にもおすすめしたい一冊です。
