M・W・クレイヴンによる〈ワシントン・ポー〉シリーズ第二作『ブラックサマーの殺人』は、娘が“生きて現れた”衝撃から始まる極上のサスペンス。
英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞作『ストーンサークルの殺人』に続く待望の続編で、今回は“ホワイダニット”“ハウダニット”に徹底した緊張感あふれるサスペンスミステリ。
「どうして?」「どうやって?」という知的興奮が最後まで持続する、シリーズ屈指の読み応えがありました。読後の満足度が非常に高い一冊です。

ブラックサマーの殺人 ワシントン・ポー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
あらすじ・書籍情報
あらすじ
刑事ワシントン・ポーが6年前に逮捕したカリスマシェフ、ジャレド・キートン。彼は娘エリザベスを殺した罪で収監されていたが、ある日、その娘が“生きて”現れた。冤罪の可能性が浮上し、ポーは自身の捜査ミスを疑われ窮地に立たされる。しかし、証拠のすべてがジャレドの無実を示す一方で、ポーには“何かがおかしい”という直感があった。分析官ティリー・ブラッドショーとともに、ポーは追われる立場になりながらも真相に迫っていく──。
書籍情報
受賞歴:シリーズ前作『ストーンサークルの殺人』が英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞
原題:Black Summer
著者:M・W・クレイヴン(M. W. Craven)
訳:東野さやか
解説:三橋暁
刊行日:2021年10月20日
出版社:早川書房
ジャンル:海外ミステリー/警察小説
ページ数:620ページ
『ブラックサマーの殺人』感想
「ポーが殺人容疑!?」から始まる最高のつかみ
冒頭でいきなり“ポーが殺人容疑”という衝撃展開が飛び込んできます。
一作目でイモレーション・マンを逮捕したあのポーですら、こんな事態に巻き込まれるのか……と、否応なく物語に引き込まれました。
短気で荒っぽい彼だからこそ「なにかやらかした?」と思わせておいて、実は巧妙な罠だったという展開。
だよね!! 信じてたよポー! この読者の信頼と不安を揺さぶる構成がとても巧く、続編としての勢いを強く感じました。
ホワイダニット×ハウダニットの面白さが爆発
今作は犯人が“誰か”ではなく、「なぜ?」「どうやって?」に全振りしたストーリー。
犯人はほぼジャレド・キートンと確信して読めるのに、「でも、6年後に娘が生きて現れる…?」という矛盾が強烈な違和感として残り、ページをめくる手が止まりません。トリック自体が奇抜ではないのに620ページを“するする読ませる”構成力は圧巻!
心理戦と捜査戦のバランスが良く、ワシントン・ポーシリーズの強みが最大限に生かされていました。
地元警察の無能ムーブが物語を複雑化させる
今作を読みながら最も苛立ちを覚えたのは、「地元警察の面子のためにポーに罪を押しつけようとする姿勢」でした。
誤認逮捕の可能性だけに全力で固執し、真犯人捜査を軽視する。もし本当に別の犯人がいたら? 新たな被害者が出たら? “メンツのために事件を終わらせる”ことほど許されないものはありません。
ポー1人しかジャレドの本性を見抜けていなかったという事実が、いっそう警察側の無能さを際立たせる結果に。
新たな仲間リグ刑事が登場するものの、彼がポーに誤認逮捕疑惑を突きつけた際の「恥を知れ」という一言が忘れられず、私はまだ彼を認めていませんからね!!という気持ちです。
ポー&ティリーの最高バディ関係
このシリーズの大きな魅力のひとつが、ポーとティリー・ブラッドショーの関係性。
仲間であり親友であり、どこか叔父と姪のような距離感。
頼れるときは即座に動くティリーの実直さが本当に素晴らしい。恋愛に発展しない関係であることもまた良い!
フリンとポーの関係も大人同士の落ち着いた友情で、海外ドラマにありがちなドロドロ恋愛に発展しない点がとても好きです。
シリーズ全体の“塩梅の良さ”はここにあるのだと実感しました。
まとめ
『ブラックサマーの殺人』は、ハウダニットとホワイダニットの醍醐味を存分に味わえる一冊でした。冒頭から放り込まれる衝撃の展開に心をつかまれ、ポーが追われながら真相に迫る流れは、緊張感と高揚感が途切れることなく続きます。前作に続き、本作も重厚なテーマを扱いながらページをめくらせる力は圧倒的で、シリーズの進化を感じられると同時に、読後の満足感も非常に高いミステリーでした。